遺言には、普通方式の遺言と特別方式の遺言がありますが、ここでは一般的に利用されることが多い普通方式の遺言の種類とそれぞれの特徴を説明します。
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公正証書遺言 |
自筆証書遺言 |
秘密証書遺言 |
長 所 |
- 方式の不備により無効となるおそれがなく、有効性を争われにくい。
- 公証役場で保管されるので、紛失や盗難の心配がなく、偽造や変造のおそれがない。
- 家庭裁判所における検認の手続は必要ない。
- 公証人が整理して作成するので、遺言者が法律に詳しくなくても正確に遺言できる。
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- 作成が簡単である。
- 誰にも知られず作ることができる。
- 費用がかからない。
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- 内容の秘密が守られる。
- 偽造・変造の危険はない。
- 費用は1万1,000円だけである。
- 代筆・ワープロ・パソコンで書いてもよい。
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短 所 |
- 証人2人を用意する必要がある。
- 費用がある程度かかる。
- 手続きのために戸籍謄本、印鑑証明などを準備して、公証役場に行く必要があるため、若干時間がかかる。
- 書き換える場合、手間と時間と費用がかかる。
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- 方式不備により、無効になったり、遺言能力が争われたり、内容が不完全なため遺言者の意図したとおりの効果が実現できないこともある。
- 遺言者が紛失したり、隠匿されたり、偽造・変造の危険がある。
- 家庭裁判所の検認の手続が必要である。
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- 同左
- 紛失、隠匿の危険がある。
- 家庭裁判所の開封と検認の手続が必要である。
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やはり一番確実なのは公正証書遺言といえるでしょう。しかし、作成までに若干の時間がかかるため、万が一に備えて、先に自筆証書遺言を作成しておき、それから公正証書遺言の作成に取りかかることをお勧めします。
自筆証書遺言を書いてみましょう。
<自筆証書遺言の作成の方式>
自筆証書遺言は、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに押印することによって成立します。(民法968条1項)
(1)全文の自書
① 自書とは、遺言者が自らの手で筆記することをいう。
② 不動産目録についても自書すること。
自筆の遺言書に司法書士がタイプ印書した不動産目録が添付され不動産の帰属すべき氏名が記載されていた事例において、タイプ印書された不動産目録は遺言書中の最も重要な部分を構成し、しかもそれは遺言者自身がタイプ印書したものでもないから、自書の要件を充足しないことは明らかである(東京高判昭和59年3月22日判タ527号103頁)。
(2)日付
① 日付は、年月日によって表示されなければならない。
日付の記載がない場合はもとより、年月の記載があるが日の記載がない遺言は無効(最三小判昭和52年11月29日家月30巻4号100頁)であり、「昭和四拾壱年七月吉日」と記載された遺言も、日付の記載を欠くものとして無効とされる(最一小判昭和54年5月31日民集33巻4号445頁)。
② 日付も自書が必要であり、日付スタンプなどを用いることはできない。
③ 日付を記載する場所については特段の制限がない。
(3)氏名
① 「氏名」であるから、姓と名前とを併記することが原則である。
② 遺言者との同一性が示される限りにおいて、通称(大阪高判昭和60年12月11日判時1185号115頁)、雅号、ペンネーム、芸名、屋号などでも有効とされる。
③ 氏名も自署が必要であり、ネームスタンプなどを用いることはできない。
(4)押印
① 押印のない遺言書は無効である。
② 印は実印でなくとも認め印でも良い。(東京高判平成5年8月30日判タ845号302頁)
(5)変更の方式
民法の定める加除その他の変更の方式は、以下のとおりである。
① 変更する場所を指示する。
② 変更した旨を付記して署名する。
③ 変更の場所に押印する。