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6.遺言の作成が必要なケース

<ケース1>夫婦に子どもがいない場合
 あまり知られていないようですが、子どもがいない場合、両親が存命であれば両親が、両親がすでに亡くなっている場合には、兄弟が相続人となります。

また、兄弟がすでに亡くなっている場合、兄弟の子どもが相続人となります。
たとえば、夫が亡くなり、遺産が自宅である土地建物だけであった場合、妻が単独で自宅に居住し続けるために、他の相続人に代償金を支払わなければならなくなることがあります。
しかし、兄弟には遺留分がありませんので、妻に全財産を相続させる旨の遺言を作成しておけば、それだけで、妻は自宅を単独で相続でき、以後も安心して居住し続けることができます。

<ケース2>内縁関係の場合
 よく知られていることではありますが、夫婦同然の生活をしていても、入籍をしていなければ、相手の相続人になることはできません。何らかの事情で入籍をしていない場合、長年連れ添ったパートナーに遺産を相続させられないということがないように、相手に財産を相続させる旨の遺言を残しておく必要があります。

<ケース3>前妻との間に子どもがいる場合
 この場合、現在の妻とその妻との間の子どものほかに、前妻との間の子どもも相続人となります。遺言によって、誰にどの財産をいくら相続させるか明確にされていない場合、残された妻子が自分で前妻の子どもと連絡を取り、遺産分割の話し合いをすることは困難で、お互いにストレスになることが容易に予想されます。誰にどの遺産を残したいか、自分自身の意思を明確にした遺言を残しておくことで、争いを未然に予防することに役立ちます。

<ケース4>家業を継ぐ長男に事業用財産を承継させたい場合
 子どもが複数いる場合、家業を継いでいる者も、親と同居している者も、県外に嫁いでいる子どもも相続分は平等です。
家業を継いでいる子どもが、事業財産を相続することは当然であるから、他の子どもたちも納得するだろうと考えて、遺言を作成していなかった場合、他の子どもから相続分の代償金を請求されて、事業が立ちゆかなくなるおそれがあります。子どもには遺留分があるため、長男以外の子どもの相続分をゼロにすることはできません。しかし、遺留分は法定相続分の半分なので、遺言を書いておくことによって、長男が他の子どもに支払う代償金の額を半分まで減らすことができます。また、長男の妻と養子縁組をしておけば、他の子どもの相続分を減らすこともできます。場合によっては、被相続人の生前に、他の相続人に遺留分を放棄してもらうことができないか検討することも必要です。
このように、特定の相続人に事業を承継させたい場合、相続が発生したときに起こりうる事態を想定し、遺言を作成するなどして適切な対策を講じておくことが必要です。

<ケース5>継子と養子縁組をしていない場合
 子どもが幼い頃に再婚したものの、再婚相手の連れ子と養子縁組をしていないとうケースはよくあります。そのまま何十年も実の親子同然に暮らしてきたのに、いざ継父母が亡くなったとき、継父母と養子縁組をしていなかった子どもは、遺産を相続することができません。どれほど遠縁になっていたとしても、継父母に実子がいる場合は実子が、実子がいない場合は継父母の兄弟が、兄弟が亡くなっている場合は兄弟の子供が相続人となります。

 もし、継父母と一度も顔を合わせたことがない継父母の兄弟の子どもが全財産を相続し、長年継父母の介護をしてきた継子が全く財産を相続できないという不公平な結果となってしまった場合、紛争が生じるのは必至です。また、継子が継父母名義の自宅に同居していたような場合には、そのまま自宅に住み続けることが困難になるおそれもあります。
このような場合は、継父母が継子に遺産を相続させる旨の遺言を作成しておくことで継子に遺産を相続させることができます。
反対に、そのような遺言を残さずに亡くなった場合、継子は原則として相続財産を受け取ることはできませんので、ぜひ事前に対策をしておくことをお勧めします。

<ケース6>認知していない子どもがいる場合
 この場合もケース3と同様の問題が起こりえます。ある人が戸籍上の妻と別居状態となり、別の女性との間に子どもをもうけ、女性と子どもと長年家族同然に生活してきたような場合であっても、その女性と子どもはその人の財産を相続することはできません。その人が亡くなった後、子どもが死後認知の訴えを起こして認知してもらい、相続人となる方法はありますが、本人が遺言を残しておけば、そのような手間をかけさせずに、認知していない子どもにも一定の財産を相続させることができます。

<ケース7>相続人の中に行方不明の人がいる場合
 遺言が作成されていない場合、不動産の相続登記をするにしても、銀行の預金を解約するにしても、全ての相続人の署名・押印が必要となります。相続人の中に行方不明の人がいる場合、その人の署名・押印がなければ凍結された銀行口座を動かすことができず、困ったことになります。行方不明の人の不在者財産管理人を選任して、その人に代わりに署名・押印してもらう方法がありますが、家庭裁判所へ申立てを行う必要があり、時間がかかるため、たちまちお金が必要な場合などは間に合いません。このような困ったことにならないように、行方不明の人以外の相続人に財産を相続させる旨の遺言を作成しておく必要があります。

<ケース8>相続人の中に精神障害などの理由により単独で法律行為ができない者がいる場合
 相続人の中に、認知症、精神上の障害などで自らの意思表示を行うことができない者がいる場合、それだけで手続きが進まなくなってしまいます。成年後見の申立てを行う方法で対応できる場合もありますが、他の相続人に遺産を相続させる旨の遺言を作成するか、単独で法律行為ができない相続人に遺産を相続させた上で、遺言執行者を指定しておくことで、問題を解決することができます。

<ケース9>相続人が高齢や遠方にいるなどの理由で相続人に相続手続きの手間をかけさせたくない場合
 ある人に子どもがおらず、兄弟が相続人となる場合、相続が発生した時点で相続人が相当高齢になっていることが予想されます。また、高齢でなくとも海外に在住しているなどの事情により、本人が残した不動産を売却したり預金の解約手続きをすることが困難な場合があります。そのような場合は、遺言執行者を指定し、遺言執行者が遺産を換価処分した上で相続人に渡す内容の遺言を作成しておくとよいでしょう。

<ケース10>相続人がいない場合
 高齢化社会が進んできたことから、高齢で子供がおらず、兄弟も亡くなっており、兄弟の子にも子供がいないため、法定相続人がいない人も少なからずいます。そのような人が遺言を残さずに亡くなった場合、遺産は国庫に帰属することになります。もし、最後に入所していた施設に寄付したい、特定の団体に寄付したい、親身になって世話をしてくれた遠縁の人あるいは近所の親しい人にいくらか財産を渡したいという場合、遺言書がなければその希望を実現することができません。そのような希望を叶えるためには遺言書を作成しておくことが必要です。
なお、身体が不自由などの理由で公証役場に出向くことができない場合は、公証人に出張してもらうことができます。

<ケース11>兄弟の中で特定の者に相続させたい場合
 同じ両親の子供同士でも、仲がよく親交の深い兄弟もいれば、疎遠だったり絶縁状態の兄弟がいることもあります。兄弟には遺留分がありませんので、特定の兄弟だけに相続させたいという場合は、遺言書を作成しておけば、その意思を実現することができます。
また、父親の相続が発生した際に、父親が認知していた非嫡出子がいることが発覚するような場合があります。自分が亡くなったときに自分に子供がおらず、両親もすでに亡くなっていた場合、その非嫡出子も父親を同じくする兄弟として自分の相続人となります。その兄弟に相続させたくない場合には、遺言書を作成しておくことでその意思を実現することができます。