弁護士の仙頭真希子です。
3学期は毎月2、3回、誕生学の授業を行うことができました。
誕生学は、誰しもが経験した「誕生」から命の大切さを学ぶプログラムです。
自分のいのちが誕生するまでにどんな風にお腹の中で大きくなってきたのか、生きて生まれるために赤ちゃんだった自分がどれだけの力を発揮したのかということをパネルや赤ちゃん人形を使って子供たちに分かりやすく物語形式で伝えています。
誕生学を聞くことで、自分ってすごい力を持っているんだなと、子どもたちが自分が生まれてきたことを肯定的に感じる機会になって欲しいと願っています。
なぜ、この活動を始めたのですか?とよく聞かれます。
弁護士が赤ちゃんが生まれるいのちの授業をするって一見関連性がないように見えるかもしれません。
でも、実際はとても繋がっていると思っています。
私は、弁護士会では犯罪被害者支援委員会にも所属しています。
岡山県で昨年死刑判決が出た事件の被害者遺族の話を聞く機会もありました。
加害者の行なった犯行は本当に聞くに耐えない内容です。何の罪もない娘さんを暴行し、強姦し、命乞いをするのもものともせずに頚動脈をナイフで掻き切って殺害したあと、遺体を運び去り、バラバラにしてゴミに捨てたという事件でした。
どうしてここまでの犯行ができるのか。
自分のことが少しでも大事だという感覚を持っていれば、相手にも相手を大事に思う家族がいるということを思い浮かべてここまでひどいやり方で人の尊厳を傷つけることはできないのではないかと思うのです。
自分のことが大切だという感覚が分からなければ、他者が尊重されるべき存在であるということを理解することは難しいように思います。
ですから、子どもたちにも、自分もそうだし、友達も周りの人も皆同じようにこうして、約0.1ミリから始まって、すごいいのちの力をいっぱい使ってお腹の中で成長して、狭い産道を一生懸命通り抜けて生まれてきたんだ、だから自分も相手も尊重されるべき存在で、傷つけてよい存在ではないのだということを感じてもらえたらと思い、この活動を続けています。
子供たちはいとも簡単に権利を侵害され、被害を訴える力がないためにひどい人権侵害をされながら救済されず放置されることもあります。そのような子供が大人になったとき、人とトラブルを起こしたり、人を傷つけたりという問題行動に繋がっていきます。
私は、人としての権利や尊厳を傷つけられた人の権利救済や人と人のトラブルの解決という仕事を弁護士としてずっとしてきました。
なぜ、そのような問題行動につながるのか、人を暴力で支配するような人間関係しか築けないのか、その答えは、その人の子供時代の育ちにありました。人を傷つける人はそれ以前に自分が傷つけられた経験を持っています。
子供は社会的には弱い存在で、大人社会のストレスはただちに目の前にいる弱い存在である子供に向かってしまいます。
だからといって、子供は無力な存在ではありません。子供たちに自分で自分を守る力をつけて欲しいと思っています。
子供は、大人から、「大人の言うことを聞くように」ということは教えられますが、大人からいやなことをされた時に、「いやだ、やめてって言っていい」ということを教えられていないことが多いのです。
だから、子供たちに、自分たちは守られてしかるべき存在であって、いやなことをされたらいやだと言っていい、信頼できる大人が必ず助けてくれるから、困ったことがあったときには相談して欲しいということ伝えていきたいと思います。
聞いてくださった多くの保護者の多くは、大事なことだけど家庭でどのように話してよいかわからなかったので、話してもらえてとてもよかったという感想を述べてくれています。
とてもニーズがある活動だと感じています。
これからもこの活動を通して一人でも多くの子供に「自分は大切な存在なんだ」と感じる機会を届けていきたいと思っています。
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